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第12話 木の大きさ

世界各地には「巨木」と言われる大きな木が多数存在し、それぞれの土地の人々に愛されています。私たち日本人にとって最も有名な巨木といえば、「この木なんの木」のCMソングでおなじみの“あの木”ではないでしょうか。枝が横に大きく張り出した美しい巨木は、ハワイ・オアフ島にあるモンキーポッドという木です。ワイルドな木目が特長で、熱帯諸国の土産物として作られているサラダボールや、エレキギターの材料としても使用される良材です。木工作業の過程で生まれるおびただしい量の木屑を見ると、木工とはひたすら木を小さくする作業であることに気づかされます。元の素材より大きい作品は作れませんから、その意味で原料となる木の大きさはとても重要です。2枚の板を接着してより大きな板にすることもできますが、接着時にはお互いの接着面を平らにするために、やはり木を削らなければなりません。そのため、張り合わされて出来上がった大きな板は、接着する前よりも少し小さくなった板が2枚くっついているに過ぎないのです。大きな木材加工場では、作業で発生した木屑を燃料として活用するシステムが出来上がっています。私の小さな工房では、廃材は趣味の焚き火に役立てています。火の中に入れるたびに、1つ1つの木片がどの作品のものかを思い出しながら、煙の香りと煮炊きを楽しみます。自然の恩恵に心から感謝する瞬間です。

木工家 アンビル シゲル

アンビル シゲル

1971年生まれ。主にギターなどの弦楽器の製作を手掛ける木工家。
1998年に単身渡米し、アリゾナ州にある弦楽器製作学校に入学。帰国後、千葉県内に自らの工房を構える。木材に対する愛情に溢れ、そしてまた造詣も深い。

© 日本シティジャーナル編集部