安全第一

私が木工作品を作る上で、もっとも重要視しているのはケガをしないということです。安全に作業することを、作品の完成度よりもはるかに優先するよう意識しています。最近ではインターネットなどを通じて木工に関するさまざまな情報を簡単に入手することができますし、ホームセンターに行けば、たいていの電動工具は手に入ります。それらを使って日曜大工を楽しまれている方も多いと思いますが、簡単な電動工具は必ず人の手で扱いますから、手軽なものほど注意が必要です。自動で加工を進めてくれる、工場の超大型機械の方がケガの心配が少なく安全と言えます。

私に楽器製作を教えてくれた先生も、左手に若い頃負ったケガの痕がありました。普通であれば製作家の道を諦めて当然と思えるほどの大きなケガだったそうですが、それでも週末には地元のクラブで自らギターを演奏していましたから、その情熱と前向きさには頭が下がりました。もちろん作るギターも息を呑むほどの美しさです。

そんな先生の存在もあって、何年木工を続けていても電動工具に対する恐怖心は少しも薄れていきません。また、あっと言う間に加工が進んでしまう電動工具は、便利な反面、ほんの小さな作業ミスでも取り返しがつかなくなることがあります。ですから、あのけたたましい轟音を聞くと、今でも足が震えるほどに緊張しますが、この恐怖心を持ち続けることが大切なのだと思います。疲れてくると集中力が下がり、同時に恐怖心も薄らいでしまいますが、そんな時は休憩してクールダウンさせます。しかし問題は、いったん作業に没頭しはじめると、休憩を取ることを忘れてしまうことなのです。

木工家 アンビル シゲル

アンビル シゲル

1971年生まれ。主にギターなどの弦楽器の製作を手掛ける木工家。
1998年に単身渡米し、アリゾナ州にある弦楽器製作学校に入学。帰国後、千葉県内に自らの工房を構える。木材に対する愛情に溢れ、そしてまた造詣も深い。

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