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自国の文化と伝統を愛することは世界の常識
「日本は素晴らしい国だ」と声を大に叫びたい!

先日仕事でタイのバンコクを訪れた時、タイ語が全くわからないにもかかわらず、仕事の合間を見計らってタイの映画を興味本意で鑑賞しました。日本では予告篇から始まるのが普通ですが、タイでは驚いたことにまず国歌が流れ、国王の写真がスクリーンに映し出されると同時に全員が起立して静かに佇むのです。若者も子供も誰一人声も出さずに国王を見つめている!仏教国であるタイでは国王が大変尊敬されており、特に現国王の人気は著しいものがあり、クーデターが起きても国王の一言で事態が収束してしまうほど力があると言われています。その国王に国民が素直に敬意を表し、起立してから映画を見るのです。また町のいたる所に国王の肖像画が飾られ、仏壇も街角の随所に設けられ、人々が線香をあげてお祈りを捧げている風景が見られます。リゾートやエスニックなタイ料理しか話題に上らない昨今ですが、タイの文化、伝統には深い感動を覚えることが多々あります。世界各地の多種多様な文化を見聞し体験することも、国際的感覚を養い相互の理解を深める為に不可欠なことではないでしょうか?

国際都市の文化とは如何に?

世界共通のモダンな文化か?

国際都市と言うと、多くの人は近代的な西洋文化を主体とした街を想像します。それは複数の人種が住むメルティング・ポットのような共栄圏と考えることもできるため、一国家の特異な文化を犠牲にしても世界的な影響力を持つ近代西洋社会の文化を軸にした街造りが最善であると思えるからですが、果たしてどうでしょう。地球に住む私たちは地球号という宇宙船に乗り込んで一緒に長旅をするようなものです。そこでもし1日3回の食事が最近はやりのゼリー状チューブパックの宇宙食だとしたらどうしますか?考え方は斬新で合理的、日々の必要栄養素を100%取るという目的も達成、お腹も膨れる、おまけに余分なスペースもとらず保管も簡単とすれば大変優れた案と言わざるを得ませんね。でもこの近代的な宇宙食で一体どれだけの人が満足するのでしょうか?恐らくすぐに飽きるのではないでしょうか?例え宇宙船内での食事でも、日本人ならやはり箸でごはんと漬物、アメリカ人ならフォークとナイフでビーフステーキ、インド人なら手でこねながらカレーライス、ドイツ人ならフランクフルトとサウアークラウト(キャベツの酢漬)が絶対に欲しくなるでしょう!

これが食文化であり、これらの違いがあってこそ初めて自国の文化に対しての愛着が深まるだけでなく、多種多様な他国文化に対しても敬意を表するという国際的感覚が養われてくるのです。

国際都市を語るならまず自国の文化を愛しましょう

自分を愛することができない人は他人を愛することができないように、自国の文化を愛することができない人は他国の文化も本当の意味で愛することができません。今日あまりにも多くの日本人、特にこれからの時代を担う若者たちが西洋文化の都合の良い部分だけを見聞きした結果、猿真似シンドローム(症候群)に陥っていることを危惧します。自分自身のしっかりとしたアイデンティティーが無いから自己のルーツがわからないだけでなく、とかく流行の欧米文化を無意識に猿真似し、それがあたかも本当の自分であるかのように演出する傾向は危機的と言えるでしょう。髪を染めるも良し、男がピアスするも良し、ラップを踊るのも良し、ハンバーガーばかり食べるも良し、但しその裏では「日本の若者は相当アメリカに感化され、コンプレックスを持っているんだね」と思っている外国人の方が多いことを覚えておかなければなりません。また逆に多くの外国人が日本の古典的文化を見て素晴らしいと感じ、必死に学ぼうとしていることも知るべきです。国際都市とは自国の文化を捨てて西洋文化の猿真似をすることではなく、自国の文化を基軸とした上で、異文化との共栄共存を目指すことに他なりません。

日本の文化は素晴らしい!いつの時代も世界が注目!

日本の文化は私達が想像する以上にいつの時代でも世界が注目しています。小さな島国でありながら2000年以上に及ぶ長い歴史を持ち、大陸の文化をタイムリーに吸収しながら独自の文化圏を構築してきた日本は、とかく話題に事欠きません。何しろ見かけは微弱な島国であるにもかかわらず、海外での戦争は第二次世界大戦を除いては負け知らず(戦争は反対ですが、ただ歴史的事実だけを述べています)。蒙古が攻めてくれば神風に助けられ、日清、日露戦争では超大国に打ち勝ち、有色人種の中で唯一諸大国と対等に長年論じ合う力を持ち続け、戦後ではその工業力において敗戦のハンディーを乗り越え、瞬く間に世界的な経済大国となった日本は、とかく非凡で勤勉かつ信心深い民が集まった不思議な国ではないでしょうか。

日本に根付いている文化は食文化、宗教文化、生活習慣、国民性、どれをとっても特筆に価します。例えば食文化においては、和食は世界のベストセラーのひとつとしてどこの国でも大人気です。特に寿司人気は世界各地ブームとなっており、ワサビ、ガリ、トロやハマチ等、寿司が一番の好物という外国人の方をいたるところで見受けます。世界有数の多様性を誇る和食には、前述した寿司を初め、刺身や焼き魚、そばにうどん、てんぷら、しゃぶしゃぶ、鍋料理、果てはフルコースの懐石料理などがあり、これ程の美味で多種類の料理を満喫できる日本人は本当に恵まれていますね。また日本のお家芸と言える柔道や空手などの武道も、長年世界中で注目されています。日本の伝統を代表する文化の一面として、全世界で数百万人の武芸家達によって日頃愛されてる武道は世界にも欠かすことのできないスポーツとなりました。

また昨今の温泉ブームに見られるように日本人は風呂好きです。この温泉文化ひとつをとってみても、世界のどこにも類を見ない多種多様の天然温泉を掘削して造り上げ、日本の伝統として今日も楽しんでいます。海外からのビジターは日本の温泉リゾートを訪れると、誰しもただ「ワンダフル」を連呼するほど、素晴らしい温泉が日本にはいっぱいあります。同様に日本の建築文化は各国の専門家が驚嘆するほどその精巧性を極めています。確かにインドのタジ・マハールのような世界的に著名な建築物は他にも散在します。しかし例えば美観と威厳を兼ね備え、尚且つ自然との調和や、ひと握りの砂までも細かく考えられて建てられた金閣寺など日本の建築文化も、世界を驚嘆させる人類最高レベルともいえる大作が勢揃いしているのです。

世界中で多くの人が愛してやまない日本の文化をもっと日本人が自ら愛し、自分の内なるものに息づいているルーツとして自覚した上で世界と接することが、異文化を理解し真の国際都市を形成するために不可欠なのです。

日本の宗教文化を大切にし、日本のルーツ、使命を考えよう

今日、あまりにも多くの日本人が、自らのルーツを考えず社会情勢も省みず時代のトレンドも把握せず、ただ私利私欲にうつつを抜かし自分に都合の良い所だけを見よう見真似でやりたい放題行なうという猿真似シンドロームに陥っています。幼い頃からノルマ化された人生設計図を歩むことしか教わらず、その道から外れるとダメ人間のレッテルを貼られ、愛国心どころか逆に社会に対する嫌悪感を抱いてしまい、主体性の無いまま生きていくうちに自分自身を見失い、その結果として国際社会を生き抜くバイタリティーが欠乏してしまったように思えて仕方がありません。しかし、解決策はいくつか残されています。

1. 家族の絆を第一とする

文化は伝承されるものであり、それは魂の内に根付くものです。それゆえ家族の中にあって、親から子、子から孫に伝わっていくべきものです。しかしながらその肝心な家族というコンセプトにひびが入り、現実問題として家庭が崩壊しやすくなった昨今、日本文化の伝承など不可能であるといわれても致し方ないでしょう。まずこの一番の元凶を改善するには、家庭内に「和」を戻すことです。家族みんなが寛ぎ共に仲良く過ごせる時間を日々の生活の中で楽しむことが大切なのです。少なくとも平日は仕事、夜は仲間と飲み歩き、週末は家族を置き去りにしてゴルフに行くような、よくある父親の典型的な行動パターンは極力慎むべきです。このごく当たり前と思われているライフスタイルが、実は自分の家庭だけでなく、日本の文化を破壊することにも一役買ってしまいますので、まず何よりも家庭と家族を第一とした先祖代々のベーシックな生き方に戻ることが大切です。

2.子供達の教育を両親が自ら実践する

日本の文化を子供たちがしっかりと心に留めて成長していけるように教育を重んじることも大事です。その鍵を握るのが円満な家庭であり、一家の長である父親とそのパートナーである母親の在り方が問われます。教育の基本は学校や塾ではなく家庭そのものであり、父と母です。両親が幼い子供達を威厳をもって自ら教えることを最重要課題として自覚し、それを長年実践することにより今日私達が抱えている社会問題の大半が解決します。その上で子供達に学校教育を提供すべきです。日本を愛し、日本の文化を愛し、その延長線として世界の文化を愛することを教えられた子供達は国際社会における適応性が断然違います。そしてルーツを自覚している人はいざというときの底力が違うのです。その為にはまず大人が日本の文化をもっと良く勉強し、楽しみ、自分のライフスタイルの一部として子供たちに教えなければいけません。パチンコで半日を無駄にする時間があるなら、子供たちと成田山にお参りし、なぜ日本人は昔から信心深いのか、話をして聞かせてあげるのも面白いでしょう。また子供たちにサッカーを教えるのも良いですが、日本の武道も捨てたものではありません。昔のように警察が剣道や柔道教室を開いていた時のほうが子供も警察官も今よりずっとまともだったと思いませんか?

3. 宗教文化を大切にし、日本のルーツ、 使命を考える。

最後に、先祖代々より伝承されてきた宗教や道徳観を学びながら、国際社会における日本の使命をよく考えることが大事です。宗教の博物館とも言われる日本には世界のありとあらゆる宗教が存在します。その中で仏教、儒教、神道が中核をなし、近代においてはミッション系の学校が多数設立されたために教育制度の一環としてキリスト教の影響も多分に受けながら培われてきた日本の道徳観とスピリチュアルな文化こそ、世界に貢献することのできる日本の美学、美徳です。いつまで世界の民からエコノミックアニマルと呼ばれて甘んじているのでしょうか?物質欲の行き着くところはアニマル化した貪りでしかありません。しかしながら日本の高次元な精神文化から生まれる想いは、家庭の絆を重んじ、社会の和を重んじ、世界平和をひたすら願う祈りに他ならないのです。その上で文化を継承していくことが大切なのです。そのような想いを持つ人が一人でも増え、本当の意味で国際都市の風格と力がみなぎってくることを夢見てやみません。

これらを実現する道のりは長いですが、行政の意識改革がまず行われ、教育に対する情熱が教師の中に復活し、学校内のインフラも改善されて多種多様の特殊カリキュラムがオファーできる施設が整い、生徒の間で「学校も面白いじゃん!」という言葉が交わされるようになることは夢ではありません。私達の世代で実現できる教育改革の第1歩です。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部