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成田の7不思議から緊急課題が見えてくる!
国際都市としての秩序を保つ為には明確なポリシーメーキングが急務

10年程前、初めて成田市内を訪れた時の第一印象を今でも忘れることができません。目に映る成田は、当初描いていた農村地区に孤立した国際空港という印象とはかけ離れ、成田市街地そのものが想像以上に発展していたのです。そして郊外に広がる田畑を眺めながらそのコントラストに感心したものです。自然環境や運動施設にも恵まれた成田には米国のような開放感があり、素朴な田園風景とうまくブレンドする空港都市としてその将来性を感じないではいられませんでした。

住めば都と言えども、アメリカの大都市や東京での生活に慣れきった者がいざ成田で住まいを構えてみると、それまでは気が付かなかった様々な不都合や不可解な出来事に遭遇しました。この10年間を振り返り「これは不思議だ」と首を傾げた7不思議をここに紹介します。これらのストーリーの中から浮かび上がってくるポリシーメーキングの大切さと行政力について1人でも多くの方が関心を持って頂ければ幸いです。

成田西口駅前幽霊銀行の怪

JR成田駅の西口は一見古めかしい参道側とは違ってきちんと区画整理されているため、綺麗で住み心地が良さそうに見えます。ところがおかしなことに西口駅前に都市銀行が1つもないのです。それどころか駅前ロータリー周辺には2件のホテル以外大きな建物もなく、住宅兼用の歯医者やプレハブの不動産屋、雑草の生えたレンタカー屋の駐車場位しか目に付かない程、開発が遅れているのです。確かにバブル崩壊の影響もあり、都市銀行はここ最近支店を撤廃することはあっても新規に開設をするという話はあまり聞きません。しかし国際都市の駅前に都市銀行のATMが1台も見当たらないというのは異常事態です。

業者の話によると成田山新勝寺や地元商店街が、西口での大型開発ができないように行政に働きかけ、人の流れが参道沿いから変わらないようにしていたとのことでした。確かに西口駅前は6車線の目抜き通りとは言えども、通り沿いは用途地域が第2種住居に指定されており、その裏道を1本入ってしまうと第1種低層住居専用地域に指定されているため、まとまった開発ができないように予め仕切られています。それに対して成田山参道沿いはすべて商業地区となっているのです。成田山は大好きです。参道沿いの商店街も栄えてほしい。だからこそ西口も発展してほしいのです。国際都市の中心街、駅前ロータリーの周辺をなぜ商業地域としないのでしょうか?

市役所周辺土地自縛の怪

京成東口駅前のロータリー周辺は成田市役所が国道51号沿いにそびえ立ち、正に成田市の中心街と言えるはずです。ところがここにはバスターミナルがあるにも関わらずその周辺は空き地と駐車場だらけなのです。どの街でも市役所の周辺は雇用者数が多いため商店街として栄えて当然なのですが、成田では驚くことに市役所の前が大型立体駐車場と小さなオフィスビル、そして最近完成したスーパーしかありません。

この奇妙な光景の理由を調べると結局バブル崩壊に問題の根源があるようです。一時坪1,200万とも言われた市役所前の交差点周辺の土地も今では坪50万円で売りに出る程相場は暴落しました。不良債権化した土地は長年空き地で放置されている場合が少なくないようです。またここ最近では外資系のベンチャーキャピタルや遊戯場関連の会社が駅前周辺の土地をこつこつと買い占めており、土地の名義が次から次へと変わってきています。今後、成田駅前周辺の開発は外資系企業の影響を大きく受けることは間違いありません。成田を愛する成田の住民による街造りの時代はバブルの崩壊と共に終わってしまったのでしょうか?

区画整理をそこまで嫌う怪

国道51号の拡張工事が終わりました。本来ならば成田周辺地域の基幹となる国道沿いは商業化が進み、特に駅周辺に近づくにつれて活気が溢れてくるものです。ところが51号沿いは拡張工事が終わったにも関わらず何ら進展がなく、実態は土地の所有者が倒産したり、地主が高値で売却を希望するため塩漬けになっていたり、お寺が雑草一杯のまま倉庫として放置していたりするため、流動性が見られるまでには時間がかかりそうです。その結果、実にみすぼらしい景観に終始しているのが現実です。この悪環境に輪をかけるように51号に接する市道は変に入り組んでおり、区画整理が進められていないため土地の有効活用がうまくできないような形で放置されているのが目に付きます。

区画整理の重要性は言うまでもなく、入り組んだ地権者の権利関係を整理して極力道路を直線的に整備することにより、土地の流動性と有効活用を促進させる事です。四角形の土地は変形な土地よりも建築コストが低いだけでなく、その隅々までも土地を活用できます。区画整理を進めるためには地主の協力と行政の強い指導が必要です。これ程までに51号周辺の道路整備が遅れている理由は一体何なのでしょうか?成田の将来を考え、町の発展に寄与しようと思うならこのままではいけないのです。

泥酔運転も情とする警察の怪

数年ほど前のある夜、旧道沿いで駐車した車に乗ろうとしていると、後方からジグザグ運転で向かってくる車が見えました。「これはもしや!」と思いきや、その車は一気に自分めがけて突っ込んできました。相手の車は自分の腰すれすれをかすりながら横殴りにドアに激突し、そのまま100m程先まで蛇行したあと運転者が車から降りてきました。呆気にとられて最初は言葉も出ませんでしたが、これは大変な事故に出くわしたと気が付き、駆け寄ってみると案の定、運転者は泥酔状態で話もできないのです。直後に警察が駆けつけたため、車の修理代だけきちんと頂ければそれで良いと考え、運転者に対する処罰は成田警察にお任せしました。

驚いたことにその翌日事故を起したドライバーの方から電話がありました。前日の醜態から一転して丁寧な挨拶と謝罪のメッセージを頂き、事故の後、奥様が警察まで迎えにこられ無事に家に辿り着いたこと等を話されて、最後に保険の手続きをしたいので宜しくお願いします、ということでした。ということは泥酔のドライバーが危うく人をひき殺しそうになり、他人の車を潰すまでの事故を起こし、自分の車を旧道のど真ん中に放置して、訳のわからないことを叫んでいたという事実にもかかわらず、警察は本人を拘留してその責任を問わなかったのでしょうか?警察はどこまで市民の味方となるべきか、謎めいています。

JR下総松崎無人駅の怪

国際都市といわれる成田の中心となるJR成田駅からたった一駅先に下総松崎駅があります。この町の名前はマンザキと呼びますが、この駅を初めて訪れた時は仰天しました。JR成田線が単線であるだけでなく、この下総松崎駅は駅員のいない無人駅であり、おまけに売店もないから新聞も買えず、とにかく人気が全く無かったのです。その上、駅のホームには雑草がはびこっており、ホームの印旛沼側は田んぼが広がり道路が1本もなかったのです。

その駅から100m程の県道沿いにある明治時代に建てられた古家に半年ほど家族と共に住むことになりました。この成田市の松崎に居住して初めて本来の成田の姿を垣間見たような気がしました。松崎地区は成田でも別世界であり、道路沿いでは毎日のようにモンペ姿のおばちゃん達を見かけ、気軽に声をかけて挨拶をするような素朴な集落だったのです。家の裏側にある竹やぶの向こうにはゲートボール場があり、老人クラブの人たちが時折ゲームを楽しんでいました。こんな成田の側面がたまらなく好きになったのもこの頃であり、その周辺を散歩し続けた結果として今日の大和の湯となる天然温泉を見つけました。都市化された成田と国際空港を囲む周辺地域に大変古風な集落が残っているというコントラストが大変興味深く感じられます。しかし何故成田駅からたった一駅しかない下総松崎が何年たっても全く発展しないままに放置されているのでしょうか?タイムマシンで100年遡ったような古風な無人駅のままで本当に良いのでしょうか?建築不可?

大型マンションの怪

並木町にライオンズマンションが建てられてから久しく時がたちます。200世帯の大型マンションが国道51号沿いにできたことにより、周辺の景観が一変しました。JRの線路をはさんで、日赤方面からマンションを眺めると巨大な壁が立ちはだかっており、夜間は玄関脇の蛍光灯が一戸ずつ点灯するため、ちょっと不気味に見えます。

さてこのマンションには不可解なことが2つあります。1つはその大きさです。マンションに接道している前面道路は幅が6mの市道で、マンションの真後ろはJRが走っています。ということは建築基準法をもってこの前面の道路幅で建物の高さ制限がかかるはずであり、その場合7-8階以上の建物を構築することは不可能なはずです。あの巨大な日赤病院でさえ8階建てです。ところがこのマンションは14階建てなのです。それだけではありません。建設当時、国道51号には下水道が埋設されていなかったため、マンションの下水管をJRの線路下をくぐらせて並木町側に接続するようにしたのです。JR線が日々運行している線路下に巨大な下水管を這わせる工事を行うことなど通常の常識ではJRが許可する事は考えられません。14階建てマンションの不思議は今日も謎に包まれたままです。

犯罪に無防備な成田市民怪

ここ最近、成田でも犯罪が増えています。窃盗事件や自動車の盗難事件はもう日常茶飯事のようになってしまい、ちょっとそこらの事件を聞いても「あ、またですか~」と、驚きさえ覚えない住民が増えているようです。犯罪慣れというのも困ったものです。一般社会においては取締る規則とそれを仕切る為の行政の力と緊張感があってこそ、本来有るべき秩序を保つことができます。そのテンションを提供する原動力が市民全体の意識レベルであり、また当然ながら警察の存在が大変重要な役割を占めるわけです。ところが成田の街中でパトロールしている警察を見ることが殆どないのは何故でしょうか?稀にオートバイに乗っている警官を見かけますが、パトロールをしているようには見えません。本来ならば駅周辺の駐車違反を取締り、犯罪を防ぐために夜間でさえもパトカーで巡回し、犯罪者を捕らえるために全力で組織を上げて動き回るべきです。市民も同様に成田をより安全な町にするために警察と協力して犯罪に立ち向かうべきです。ところが市民の警戒意識が薄く、警察をひたすら頼るという受身の姿がいつまでも続くのは一体何故でしょうか?

成田の7不思議を書きながら思うこと、それは成田を愛し、千葉を愛し、日本を愛し、世界を愛する人が力を結集して成田の将来を真剣に考える必要性があるということです。時代に見合ったポリシーメーキングに知恵を絞り、それを実践するための行政力を兼ね備えることが、国際都市成田を形成する為のこれからの緊急課題なのです。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部