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市民が主役だからこそ問われる行政のモラル!
情報操作がまかり通る現代社会において大切にしたい誠実な心!!

「市民が主役」の街づくりを実現することの大切さが最近各地で話題になっています。市民の誰もが市政を身近に感じ、ビジョンに共感を覚え、自らもその政策に何らかの形で加担することを誇りに思える良い意味での「プライド」を持てたら素晴らしいですね。成田市では市政に関わる情報公開を徹底することが公約され、タウンミーティングを開催して市民の声を直接聞く機会を提供し、市民の声を反映させながら多種多様の行政サービスを提供することを目指しています。こうして市民の意見がタイムリーに行政に反映されていけば、誰もが自然と「自分も主役の1人」と本気で考えるようになるのではないでしょうか。このようにポジティブで明るいスピリットを持つ街のイメージを成田のビジョンとして描いていきたいものです。

市民が主役になる為の4つの基本条件とは?

成田市民が本当の意味での主役を演じる為にはその原点としてまず市民、行政スタッフが共に勤勉であり、社会情勢に深い関心を持ち、自ら市の将来を担う一員としてできる限りの社会貢献をしたいと願うことが必要です。行政に多少の関心はあるが「良くわからないので、何でも先生に一任します」という一昔前の考え方には終止符を打たなければなりません。

次に市政の実態が市民に見えていること、すなわち透明度の高い情報システムの実現です。政治の世界では正確でタイムリーな情報収集が命です。その為、市民に対しても市報、タウンミーティングやインターネット経由で各種情報が素早く開示される必要があります。ところが現実問題として世の中では情報操作が頻繁に行われており、時には世論さえも操作されることがあります。それ故、情報を管理する側が強い意志のもとに不正操作を徹底して排除することが大事です。

また市民の意見が反映され易い行政プロセスを実現させることも大事です。単に透明度の高い情報が提供されるだけでは、市民が主役とはなりえません。すばやく行政に反映された自分達の意見を目にした市民1人1人が達成感を味わうことが大事です。この感動こそ、本物の「主役」としての第1歩となります。

最後に透明度の高い市政にふわさしく、政治に携わる人間のモラルが非常に高いレベルでなければなりません。ここで大切なのは表面的なパフォーマンスではなく、あくまで個人のハートそのものであり、市民を自分と一心同体と考えるような他愛の精神です。これらの諸条件がすべて整った時、初めて本当の意味で「市民が主役」になるための基礎が出来上がったと言えます。

透明度への過剰反応に象徴される市民の不安

「知らぬが仏」という言葉があるとおり、知らなくても良いことは実社会において多々あります。およそ20数年前、ペンシルベニア大学で病院経営学を学んでいた時に手術室で現場実習の時間がありました。授業の狙いはオペルームでの作業の流れをありのまま体験し、今後の経営手腕に活かすというものでした。最初のオペルームでは体重が100kg以上もある黒人中年女性の胆石摘出手術が行われました。100%の透明度と言えばこれ以上のものはありません。自分の目の前で黒人女性の黒い肌にメスが入り、鮮血が滲み出るのをこの目で目撃したのです。「これはとんでもない所に来てしまった」と思うのもつかの間、オペの担当主治医はせっせと彼女のお腹を更に深くメスで切り裂いていきました。まさか皮下脂肪があそこまで鮮やかな黄色に見えるとは考えもつきませんでした。その真ッ黄色な脂肪の上を滴る鮮やかな赤い血の匂いがあっという間にオペルームに充満し「うっ!」と思った瞬間、あまりの刺激に目が回り、その場に座り込んでしまいました。透明度も行き過ぎると怪我をします。

透明度は大事なコンセプトですが、必要としている情報レベルが人それぞれ違うため、何でも見せれば良いというものではありません。医者が手術をする際はその根拠が明確であること、患者の健康維持を第一としてオペが成功することが大事であり、途中プロセスの詳細はカルテとして保管され、必要に応じていつでも提示できるようになっていれば良いのです。会社組織においても機密事項というものがあり、一般社員には決してリークできない情報を上層部が握っているのが普通です。企業秘密が守られなければ優位性を維持することができません。国家においても当然機密事項があり、特に軍事や政治の中核においては厚いベールに包まれる部分が存在するのは当然です。現実問題として管理が伴う所では必ずといってよい程、透明度に制限が生じます。

行政と市民との関わり合いにおいても、本音を言えば、安全で住み良い街であり、自己の権利がきちんと守られ、納めた税金が浪費されず、尚且つ税金そのものが安くなれば透明度の話など殆ど無くなるのです。しかしながら現実には、今1つ街は安全性に欠け、市民の血税が無駄遣いされているとしか見えてこないのです。それ故、事態を深刻に受け止めた市民は過剰反応して、しきりに透明性を求めてしまうのです。

民意が素早く反映される公聴会システムの提案

行政が直接市民の声を聞く機会を幾ら設けて徹底した情報開示を行ったとしても、例え市民サービスの充実を図ったとしても、それだけで「市民が主役の街づくり」を実現したとは言えません。本当の意味で「市民参加型」の市政を確立するためには、もっとダイナミックな市民の介入を必要とします。

アメリカの新興都市では毎週のごとく頻繁に公聴会が市役所で開催され、その一部始終が情報としてケーブルテレビで全世帯に送られています。多くの市民が注目する理由は市民の利害関係に直接関わる議題が多く、票決も早ければ当日、遅くても1~2週間というスピードで決まるようなシステムとなっているからです。例えばショッピングセンター前面に新しいレストランの建築確認の申請が出されると、商業地区に関連する条例に基づいてその是非を問うために公聴会が開催されます。その場で反対意見、賛成意見が住民から出されて議論され、その結果、市役所の執行担当委員数名によって採決されるのです。例えば駐車場がいつも溢れていて交通渋滞の原因になっている、という意見が複数出されると、それだけで申請が却下され、その問題を解決するための改善案を添付した上で、再度確認申請の提出を求めるという決定が下されます。こうして参加する市民1人1人が、即自分の意見が反映されることを目の当たりにして、「市民が主役」であるという実感を持つようになります。成田でも一般市民が気軽に直接討論ができる場を設けて、その結果が行政にすぐに反映されるシステムを目指すべきです。市民が積極的に参加する市政ではダイナミックな展開を期待することができます。このように市政の門戸を大きく開いて民間の意見を率先して取り入れる為にも、自己の利害関係に固執する余り排他的な市政に傾きやすい要因は、積極的に排除しなければなりません。

市議会での談合が事実なら関係議員は辞職するべき!

3月5日の成田市議会において市町村合併に関する法定協議会の設置が16対10で否決されました。ところが聞き捨てならぬことに、この投票数の背景には一部の市議会議員の間で談合があったことが噂されています。成田市だけでなく周囲の市町村を含む20~30万人の生活に直接関わる貴重な決断をするのに談合などあってはならないことです。

市町村合併はその結果として市役所のリストラ及び議員数の削減につながるため、市議会においては長年反対意見が圧倒的に多かったようです。その背景の中で小川前市長が昨年11月に思い切って法定協議会の設置を決断したわけですから市議会の反発は想像がつきます。問題は合併反対派が議員の殆どを占めていたことです。しかし国の指導に基づいて合併推進の協議が全国各地で盛んに行われている最中、そうたやすく法定協議会の設置は否決できません。ましてや多くの市民から信頼され、市政を委ねられている小川前市長が勇断されたことです。まかり間違っても市議会が圧倒的多数をもって設置案を否決することは余りに露骨であり、小川市長の面子を丸つぶしすることになりかねません。そこで反対派の議員がわざと賛成票を入れる議員を数名決めて、もう少し市長が善戦したように見せかけた疑いが持たれています。実際は小川市長に気を使ったというような奇麗事ではなく、各市町村やメディアから「合併に反対する理由」を追求されることを避けるための手段だったと推測できます。真偽の程は定かではありませんが、3月5日の選挙以降、賛成票を投じた10名の市議会議員が(内、3名は退任)がその後、賛成投票にふさわしく合併推進の為に政治活動を積極的に行っているかどうかを検証するだけで簡単に結論が出るはずです。

民意を反映した行政の実現には公務員のモラルと人格が大切!

「市民が主役」の街づくりは簡単ではありません。政治には力関係が付き物であり、主権を維持するためには強い指導力と対外的交渉力が不可欠です。また秩序を保つ為にはある程度の情報操作も必要となり、これらの利権が絡むとどうしても誘惑に陥り易くなります。それ故、透明度の高い情報を市民に提供し、民意を反映した行政を実現するためには、行政に関わる人々のモラルと人格が最も大切なチェック事項となります。市長や議員を含む公務員のハートが純粋であり、2枚舌を使わず、私利私欲に溺れず、権力をかさに着ず、ひたすら自分のごとく互いの幸福を求めるならば、市民は安心して政治に参加し、本当の意味で「市民が主役」となるリッチな体験をすることができるでしょう。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部