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前途多難な成田空港の民営化
世界の人気空港から成田が成功する秘訣が見えてくる!

使い勝手抜群の香港空港が成田のモデルケースだ!

香港の国際空港で感心することが3つあります。まず高級ホテルが隣接している為、空港に一旦到着すれば外に出ることなくそのままカートを押してホテルの入り口で荷物を預けることができます。税関を通過した後、一度も荷物を手に下げずにホテルにチェックインできること程、旅の疲れを癒す特効薬はありません。しかも香港REGENTホテルには宿泊客が無料で使用できる屋内外プールやサウナ、トップクラスの運動機器を備えた高級フィットネスクラブもあります。食事は大変美味しく、部屋は広くて快適そのもの、値段も1泊千香港ドル以下(1万5千円弱)と大変良心的。正に旅人の味方です。

次に広大な敷地を上手に活用して交通機関とのアクセスが大変わかりやすく整理されていることが挙げられます。ゆったりとスペースが確保された到着ロビーの正面向こう側に香港の市内に通じる地下鉄のターミナルがあり、すぐに目に入ります。空港ロビー、即、地下鉄の駅という構築がなされている為、迷うことがありません。駅の手前には左右に幅20m程の長いスロープが広がり、右に下りるとバスターミナル、左に下りるとタクシー乗り場につながっています。バスターミナルでは騒がしいアナウンスなど一切なく、落ち着いた雰囲気の中で旅行者は旅を続けることができます。タクシー乗り場も十分なスペースを確保してあり、行き先に応じて明確にターミナルが分かれているだけでなく、常時アシスタントが誘導している為にここでも迷うことがありません。空港から香港の中心街まで車で40分程かかる長距離の移動も、交通アクセスがここまで分かり易く充実していると、クレームが生じる心配がなくなります。

また、有料ですが空港内では、その広大な建物内を快適に動き回るためにゴルフカートに似た乗り物で移動することができます。出入国審査から搭乗口まで数百メートル以上ある大空港ですから、旅疲れで足がむくみ歩きたくない時や、ご老人や障害者の方が同行している時など特に重宝できるサービスです。こういうワンクラス上のサービスを提供できるかどうかが国際空港のイメージアップを図るための大切な要素となります。

世界中の国際空港から人気の秘密を探ろう

車社会の頂点を極める米国、ロスアンジェルスの国際空港でも感心することが2つあります。1984年のロス・オリンピックを機会にコの字型既存ターミナルの真上に2階部分を増築して延べ床面積を倍増させたのですが、同時に道路アクセスも大幅に改善され、2階は出発ロビー、1階は到着用のターミナルという形で明確に区分されました。その結果、航空会社によって配分されている7棟のターミナルは、同一敷地内の大拡張にもかかわらず、以前よりも数段に使い勝手が良いものとなりました。

またパーキングがとても充実していることも見逃せません。ちょっとだけ停めたい人の為にはターミナルの道路向かいにコインメーター式の駐車場が設けられています。送り迎えのために1~2時間停めたいという人にはその短時間用エリアの後部と上層階に大型駐車場が控えています。勿論、立体駐車場とターミナルはオーバーブリッジを使って行き来できるため、雨が降っても濡れることがありません。また長期間駐車する場合には空港に隣接したパーキングロットCを活用することができます。その広大な敷地面積はディズニーランドの駐車場を上回る程であり、いつでも予約なしに気軽にゲートインしてどこでも空いている所に駐車できます。そして10分ごとに空港ターミナルとを行き来するシャトルバスがあるので、時間のロスがありません。料金も1日10ドルという手軽さが人気の秘密といえます。

いつ訪ねても気持ちの良いシンガポールのチャンギー国際空港は通路スペースに大変ゆとりを持たせている為、広々としています。出入国のロビーが一緒になっているせいもあり、飛行機から降りたらすぐに広場という感覚で空港の雰囲気を楽しむことができ、この開放スペースが高級感をさらに醸し出しているのです。またロビーの中心には複数台の電話が設置してある電話デスクがあり、市内通話に限り自由に利用することができます。ちょっとした待ち合わせがある場合や、飛行機の到着時間が変更したとき等、旅行者にとっては大変ありがたいサービスです。こういう心使いが旅行者のハートを掴むのではないでしょうか?

またシカゴのオハラ空港はとても明るい雰囲気を持つ空港として人気があります。ネオンが通路いっぱいに輝き、ふとディズニーランドにきたのかな、と錯覚してしまう程の楽しさを感じることができます。日本人が持つ空港レストランのイメージはどうしてもデパート食堂的なファミレスの集合体になりがちですが、シカゴでは勿論ファミレス感覚のレストランだけでなく、大型画面でスポーツを観戦しながらお酒を楽しめるパブも含め、子供から大人まで誰もが楽しめる多種多様のレストランとショップで一杯です。これからの空港は旅をする人がいつでも楽しみ、くつろぎ、時間を忘れて(飛行機に乗り遅れないほど)遊べる所であってほしいものです。

成田空港でも1つだけ感心することがある

成田空港では今日1つだけ、これは世界のトップレベルにあると自負できることがあります。とは言っても誰もが利用できる施設ではないのですが、近年拡張した第1ターミナル内に新設されたユナイテッド航空の旅客用ラウンジ、Red Carpet Clubはとても良くデザインされています。せんべい等のちゃちなおつまみしか置いてない日系航空会社の名前だけの高級ラウンジとは違って、ゆとりあるスペース配置の中で、オードブルカウンターにはしっかりとお好み寿司が用意されており、美味しい生ビールと高級ワインも飲み放題。インターネットを自由に使える仕事スペースも十分確保してあり、くつろぎ派は大型テレビでスポーツ観戦を楽しみながらお酒をたしなみ、雑談にふけることもできます。勿論、市内通話はすべて無料。時間を潰すことさえ忘れさせてくれるこのラウンジは、静かな事だけが取り柄の日本航空のファーストクラス専用さくらラウンジより遥かにグレードが上です。(筆者はJALグローバル、Americanプラチナム、Unitedプレミア(旧Executive)、その他5航空会社のマイレッジメンバー)。

成田空港が抱える決定的問題の数々

これらの優れた数々の国際空港と比較すると、現実問題として成田空港は民営化によっても解決策を見出すことのできない様々な課題が山積みです。例えば、1.世界一高い着陸料、2.世界一主要都市部から遠い、3.滑走路の整備が完了していない、4.国内線とのアクセスが貧弱、5.第1と第2ターミナルの距離が離れすぎている、6.空港の営業時間が制限されている、7.旅客がくつろぐ施設が少ない(特に到着ロビーと出国手続き後のターミナル側)、8.空港正面が狭く混雑する(特に第1ターミナル)事など、枚挙にいとまがありません。これでは一般の事業なら客離れが生じて当然と言えます。

特に着陸料の問題は緊急課題です。成田は唯一の首都圏空港であるため着陸料が高くても航空会社は我慢して支払うだろう、という軽率な見解が未だに国交省内ではびこっていると聞きます。このような殿様商売の感覚からコストダウンの大切さを忘れ、高値売りを平然と貫いている企業の多くは競争力をやがて失い滅びて行くことになります。それ故、成田空港も首都圏唯一の国際空港だからといって悠長なことは言っておられません。ましてやロンドンのヒースロー空港におけるジャンボ機の着陸料は成田の10分の1、たった9万円なのです。これでは航空会社から我慢にも限度があると見切りをつけられてもしかたないでしょう。

成田空港の改革は今が、旬!できることはすぐに始めよう

民営化への期待の本質は着陸料の値下げです。それ故、日本の高コスト体質に甘んじることなく今すぐ着陸料を現在1t当たり2,400円から1,900円台まで一気に引き下げることが再生の切り札となります。その為には徹底したコスト削減を断行することが不可欠であり、これは大規模なリストラに着手することを意味します。例えば形骸化された道路上の車両検問を撤廃して人権費を大幅に削減してはどうでしょうか?今時、空港にバリケードを張り巡らしているのは戦時体制の国だけであり、テロ対策にもなっていません。無駄な経費がどこに費やされているかを徹底して検証すれば、年間数十億円程度のコスト削減は簡単に実現できます。

確かに着陸料を400円引き下げるということはおよそ年間100億円強の減収につながると推定する向きもあり、原資を確保するための新規事業に話題が集中しがちです。例えば免税店の直営等、各種事業案が提言されていますが、いくら「武士の商法」をもって新規事業を目論んだとしても、結果が出るまでには相当の時間を要します。その間に肝心の航空会社から敬遠されてしまっては成田空港がアジアのハブとしての機能を損ねてしまいます。だからこそ着陸料引き下げの原資を確保してから値下げを実施しようという甘い考えは捨てなければなりません。

旅客と航空会社双方から素直に喜んで納得してもらえるハイレベルな空港サービスを提供するための最初の1歩が着陸料の値下げです。その上で成田空港の24時間化も含め、諸外国の空港に負けない各種サービス事業を展開することを考えるべきです。今できることを即、大胆に実行する。これが今日成功している民間企業の姿です。成田空港民営化が成功する鍵は、もしかするとゴーン氏が総裁となることにあるかもしれません。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部