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JALが世界一になることが成田の繁栄となる!
成田空港のイメージアップには日系航空会社のグレードアップが不可欠

飛行機旅の思い出ベスト3 夢のフライトが現実に!

過去数10年間にわたり幾度となく飛行機で世界各地を旅しましたが、その中で最も感動した思い出に残る素晴らしいフライトが3つあります。その筆頭にあたるのがドイツのルフトハンザ航空の思い出です。7年程前、仕事の都合でフランクフルトに行くことになり、家内とまだ赤子の長女と一緒に3人で旅をしました。私はマイルポイントを使ってファーストクラスの無料航空券を取得し、家内と子供には別途エコノミー席のチケットを購入しました。乳幼児でも国際線は無料ではなく、正規運賃の10分の1を払わなければいけませんので、もし親がファーストクラスでドイツに行くとすると、赤ちゃんのチケット代が何と10数万円になってしまうのです(ドイツへの正規料金は100万円を超えているのです!)。さて、ドイツ人のスチュワーデスとチーフパーサーに出迎えられて機内に乗り込むと、私はそのままアッパーデッキ(2階)のファーストクラスのキャビンに上がり、家内と子供は奥のエコノミー席に向かいました。広々としたファーストのキャビンで荷物を片付けくつろいでいると、5分もたたぬ内に後ろから誰かが声をかけてきました。振り返ると、そこには先程のチーフパーサーが立っており、非常に丁寧な英語で「If you don't mind, I would like to invite your wife and your baby to the first class cabin」と言われるのです。仰天しました。エコノミー席にいる家族を無償でファーストクラスに招待して下さるというのです!満席のエコノミー席で赤子の面倒見るのは大変だと思われたのでしょうか、夫婦が分かれて座るのは見るに忍びないと同情されたのでしょうか。とにかく広い2階席には前方に1人のお客様しか搭乗していなかったためにご好意に甘えて、アッパーデッキ後部を家族3人で占領し十分に楽しませて頂きました。ルールや規則よりも人情を優先し、チーフパーサーにそこまでの権限を与えているルフトハンザ航空には頭が下ります。あの優しい心遣いを今でも忘れることができません。マニュアルにがんじがらめに縛られた日系の航空会社ではきっとありえないことでしょう。

2番目の思い出はサッカーのワールドカップがフランスで行われた時、ジュネーブ経由でフランスのリオンにJALで旅したことです。この時だけは一生に一回のことと割り切ってファーストの無料航空券を家内と2人分取得し、子供もファーストに同行させました。無論、子供の航空券は空港で正規料金の10分の1を支払い、大変高い買い物をした気分になっていました。ところがワールドカップだから恐らく満席だろうと予測していたファーストクラスが、その日に限って乗客は私の家族だけだったのです!搭乗すると同時に「お子様と気兼ねなくご自由にくつろいでください」という言葉の通り、めちゃくちゃ贅沢に楽しませて頂きました。こんな至福の時は2度とこないかもしれません。

また初めてシンガポール航空のファーストクラスで成田からシンガポールに旅した時は、感動するほどその内容がすべてにおいて頂点を極めていました。まずJALやANAのように圧迫感のある2列式のシートタイプとは違って窓際には1列しか席を設けずシートピッチも座席の幅も十分なゆとりを取ってあり、正に「空の個室」と呼ぶにふさわしい貫禄がありました。そして一際目に付くのが前後にスライドして位置を調節できる大型のTVスクリーンと、豪華な木目仕様のインテリアです。大型のテーブルは書類を左右に置いても楽に食事ができ、またその食事の内容、サービス共に言うことなし。正にベストフライトと言えるでしょう。日系航空会社は相当な努力をしなければ追いつくことができない時代になったと今でも痛感しています。

不快指数100%に近いフライトも多数ある

素晴らしいフライトがあれば最悪のフライトも当然あります。悪口を並べるようで申し訳ないのですが、まずバンコクからダッカへ飛んだ時のバングラデッシュのビーマン航空は、とにかく航空機が古くてがたがた、清掃は行き届いておらず、床のカーペットは剥がれたままでした。エコノミークラスでは生ぬるい水か砂糖水のような飲み物しかなく、飲むに飲めず完全にギブアップ状態。幾ら第3諸国の航空会社とはいえ、全く感心できません。

最近の不快極まりないフライトとしては中国南方航空の広州-成田便です。一応JALとの共同運航便としてJALのフライト番号もついているので安心してビジネスクラスに搭乗してみたところ、機体が古くてシートピッチが狭く、パーソナルムービーもないのです。おまけに食事が大変まずく、何故こんなひどいまま放置しておく?と首を傾げてしまうほどでした。

いつ訪ねても気持ちの良いシンガポールのチャンギー国際空港は通路スペースに大変ゆとりを持たせている為、広々としています。出入国のロビーが一緒になっているせいもあり、飛行機から降りたらすぐに広場という感覚で空港の雰囲気を楽しむことができ、この開放スペースが高級感をさらに醸し出しているのです。またロビーの中心には複数台の電話が設置してある電話デスクがあり、市内通話に限り自由に利用することができます。ちょっとした待ち合わせがある場合や、飛行機の到着時間が変更したとき等、旅行者にとっては大変ありがたいサービスです。こういう心使いが旅行者のハートを掴むのではないでしょうか?

また今年2月に乗ったJALの成田-シカゴ便のファーストクラスでは、電話受付の担当者から「シートは1列に並んでいます」と事前に伺い、「シンガポール航空のような最新型のクラフトだ!」と期待に胸を弾ませていました。ところが搭乗してびっくり。確かに座席は窓際1列に並んでいるものの、狭いシートをジグザグに置き並べただけのお粗末な旧式タイプ。更に最悪なことに老朽化のため座面が変形し、かつ多少前のめりに傾いていた為、暫く座っていると腰痛が始まりました。耐えきれず席を替えてもらいましたが、他も座面が傾いておりどれも同じでした。ファーストクラスの乗客を腰痛で苦しめるようではJALも大したことはありません。

航空会社のランクを決めるための基準

快適な空の旅を楽しむために大事なことは、まず十分な空間を確保できる広いシートピッチを備えた座り心地の良いシートがあることです。自分の身の回りに多少なりともゆとりがあってこそ、初めて長時間のフライトでも何とか我慢できるものです。どんなに笑顔で迎えられても狭いシートでは、長旅を楽しむことはできません。

次に大事なことは食事のグレードです。機内食が舌鼓を打つ程の美味ならば、じっくり時間をかけて食事を楽しむことができ、搭乗員のサービスが多少悪くても、さほど気になりません。特にオードブルからサラダ、アントレーと順に配膳されるワゴンサービスですと、よりリッチな気分に浸りつつ心地よい椅子でのんびりとビデオを見ながら味わえます。長い空の時間を有意義に消化できるかどうかはディナータイム次第なのです。石のように硬くなったパンや冷えてぱさぱさのご飯をワントレイ方式で平気で配膳することがまかり通る航空業界の現実の最中、食事の大切さを今一度見直す必要があります。

3番目に大事なことは笑顔のみならずタイムリーで心のこもったパーソナルケアーでしょう。海外を暫く旅した後、日本人スチュワーデスの笑顔で、ほっと一息ついた方も少なくないはずです。特に子供やお年寄りへの、日系航空会社の対応は特筆すべきものがあります。しかし日本人はどうしても客観的に物事を分析するのが苦手なため、スチュワーデスに明るくにこやかに接されるとそれだけで良しとし、つい身の回りの不備を考えなくなってしまいがちです。笑顔で機内に迎えて頂いた後、そこが快適にくつろげる空間かどうか、そして食事が良いかどうかを見極めることを忘れてはいけません。

全く当てにならない航空会社人気ランキング

成田空港が繁栄するためには、日本の航空会社が顧客のニーズをしっかりと把握し、良質なサービスを提供し、日本人だけでなく外国の方からも愛される航空会社とならなければ世界的な評価は上がりません。JALが世界一と認められるときに、成田空港もJALの本拠地として活躍の場が増えます。その為には航空会社が常に旅客の立場になって、世界トップレベルの機内サービスを十分に研究しながら、全ての路線において妥協せずに導入することです。日本国民、ひいては世界中の旅客の信頼を得ることが世界一への道であり、その結果、成田空港もJALの総本山として繁栄することができます。JAL、頑張れ!!

成田空港が繁栄する為にはJALの繁栄が不可欠!

民営化への期待の本質は着陸料の値下げです。それ故、日本の高コスト体質に甘んじることなく今すぐ着陸料を現在1t当たり2,400円から1,900円台まで一気に引き下げることが再生の切り札となります。その為には徹底したコスト削減を断行することが不可欠であり、これは大規模なリストラに着手することを意味します。例えば形骸化された道路上の車両検問を撤廃して人権費を大幅に削減してはどうでしょうか?今時、空港にバリケードを張り巡らしているのは戦時体制の国だけであり、テロ対策にもなっていません。無駄な経費がどこに費やされているかを徹底して検証すれば、年間数十億円程度のコスト削減は簡単に実現できます。

確かに着陸料を400円引き下げるということはおよそ年間100億円強の減収につながると推定する向きもあり、原資を確保するための新規事業に話題が集中しがちです。例えば免税店の直営等、各種事業案が提言されていますが、いくら「武士の商法」をもって新規事業を目論んだとしても、結果が出るまでには相当の時間を要します。その間に肝心の航空会社から敬遠されてしまっては成田空港がアジアのハブとしての機能を損ねてしまいます。だからこそ着陸料引き下げの原資を確保してから値下げを実施しようという甘い考えは捨てなければなりません。

旅客と航空会社双方から素直に喜んで納得してもらえるハイレベルな空港サービスを提供するための最初の1歩が着陸料の値下げです。その上で成田空港の24時間化も含め、諸外国の空港に負けない各種サービス事業を展開することを考えるべきです。今できることを即、大胆に実行する。これが今日成功している民間企業の姿です。成田空港民営化が成功する鍵は、もしかするとゴーン氏が総裁となることにあるかもしれません。

(文・中島尚彦)

© 日本シティジャーナル編集部