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第1回 自分の健康は自分で守る

“山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。”これは夏目漱石の『草枕』小説の冒頭の文句です。人生には苦しみも楽しいこともあります。できることなら楽しい、幸福な日々を送りたい。誰もが願います。衣・食・住が満されていれば幸福だと考えられていた時代がありましたが、これらも実は健康が保障されてこそ、本当の幸福だと考えられるようになりました。幸福論を語るとするならば、もっといろいろの事柄を挙げねばなりません。例えば知識を生活の中で必要に応じて実践することを知恵と言いますが、誰もがその知識を知恵に活かしてほしいものと願っています。中でも表題の「自分の健康は自分で守る」ことは大変重要なことであり、このシリーズで考えてみたいと思います。

私たちは生まれながらにしてツボを持っています。いうまでもありませんが、ツボは基本的に体表にあります。そのツボの特性を生かせば、体のどこに矛盾があるのかがわかります。また健康の維持と治療に役立てることも出来ます。ツボに関わる特性の活かし方は、手の指や手のひらを使って、押したり、もんだり、叩いたりする手技法、温熱を用いる灸法などがあります。また他に鍼法もありますが、ここでは触れておりません。

今日使われているツボの考え方は古代中国で発展し、中国、朝鮮を経て、僧侶らによって、日本に伝えられたものです。それは約1200年も前のことです。この伝承医学は漢代、つまり2000年ほど前に一定の完成をみたといわれています。当時、痛み、しびれ、ほてり、冷えといった症状は、悪霊(邪)が体表から体内に侵入して起ると考えられていました。そこで尖ったもの、火の燃えさしや、手を使って体を揉みくしゃにすれば、邪はたまらず、体外に逃げ出すに違いないと考えられました。思わくは的中しました。これが針灸、あん摩法の誕生と変遷の歴史です。

人体は不養生や自然環境によって、しばしば病気になります。一方その病気を治そうとする機能も人体には備わっています。これを自然治癒力とか、自然良能と呼んでいます。その一例としてツボに刺激を加えると、自然治癒力が強く反応をおこします。こうしたことが科学的に証明され、今や世界中が注目するようになりました。外に食事療法や身近な利用できる薬草の話などをちりばめ、筆を進めたいと考えています。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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