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第52回 自分の健康は自分で守る

「人は考える葦(あし)だ」とはフランスの数学者であり、物理学、哲学者として、1600年の中期に名を馳せた偉大な人物であったブレーズ・パスカルの言葉です。「人間は、自然の中で最も弱い1本の葦のようなものにすぎない。だが、それは考える葦である」と。つまり“人間とは考えるという人間の特性の偉大さを説いている”と。『参考:日本語大辞典・講談社』

確かに人間はいろいろな物事の創造や発見に関わってきました。『竹取物語』に語られる、かぐや姫は、天女として、翁(おきな)・媼(おうな)に育てられ、成長すると、月の世界に向うということ。今や現実に、月へ向けてロケットに搭乗し、ある目的を果してこの地球に戻るという偉業を成し遂げてしまったのですから。

さて、これからが本題です。私の専門は東洋医学の臨床家です。わけても鍼(はり)の治療が主です。以前は漢方医学といわれていましたが昭和二十年の初頭に、西洋医学に対して、東洋医学という名称が生れました。この頃から時が経るに従って、東洋医学の特徴が次第に認識されはじめました。

身体が痛んだり、しびれたり、冷えたり、するのは悪霊が体外から浸入し、わるさをすると考えたのは、古人にとっては当然のことと理解できましょう。また甘味と違って、苦い味は、人も嫌います。そこで考えられたのが「良薬口に苦し」といわれる漢方薬にみられる、薬の数々です。悪霊(邪)も、たまらず体外に逃げると考えました。この思惑(おもわく)はほゞ当を得たといってよいでしょう。その後、さまざまな試行錯誤を経て、今日のツボ療法(鍼・灸・按あんま摩・氣功)、漢方薬療法があるのです。

昨年は『源氏物語』が誕生してから1000年という記念すべき年でした。この物語の中に「末摘花(すえつむはな)」の編があります。末摘花とは紅花の古名であることは、案外知られていません。またアカネの空といえば、太陽が西に傾くときの、あの夕やけの色、だから草冠に西を書いて茜色(あかねいろ)と表現します。

茜の根は茜色、すなわち赤黄色です。この紅花と茜は、漢方薬、民間草、それに染料としても大変有名です。漢方薬であり、染料となるものは他にも多数あります。

冒頭に述べましたように、物事の創造や発明、発見は極く単純な発想から次第に複雑な仕組みへと発展するものです。今月は紙面の都合で、来月は女性の生理について考えてみたいと思います。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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