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第70回 自分の健康は自分で守る
利尿は重要な生理機能

行き付けの縄暖簾(なわのれん)をくぐると、そこには、顔見知りの飲み仲間が杯を傾けていました。隣に腰をかけて、先ずは型通りの挨拶を交わします。彼らも、ちょっと前に入って来たばかりの様子。机にはつまみ一つも見当たりません。“(あぶ)ったイカでも、とりあえず注文しましょうか。”と言うと、間髪を入れず“アッタリメェーよ”と返して来ました。

前置きが長くなりました。当たり前が当たり前であることは平穏です。入れたら出す。出したら入れる。生理学でも物理学でも当然であり、重要なことです。

私の故郷は茨城の北部。田畑もあれば山川もある平和な空間です。山を訪ねれば木通(あけび)独活(うど)、路傍にはオオバコ、ノビル、里の林にはスイカズラなどが生えています。知る人ぞ知る、これらは皆、漢方薬であり民間薬として名が今日に伝わっています。

前回や以前の号で記しましたように、三快の一つに快食(飲)があります。美味しく飲食ができること。そして消化し同化し、糟粕(かす)は体外に快く排泄できることが健康のバロメータと書きました。

先に挙げた植物はほとんど有効な利尿作用があります。医食同源と言われるように、食物と同時に薬用にも用いられます。つまり食用の目的であれば食物であり、薬用の目的であれば薬となるのです。

医食同源に当たる動植物は、私の知っているだけでも数百をかぞえます。あけびは木通(モクツウ)、うどは独活(ドッカツ)、オオバコは車前草(シャゼンソウ)、ノビルは(サン)。スイカズラは葉と茎は忍冬(ニンドウ)、花は金銀花(キンギンカ)といいます。スイカズラの花をひっぱって、花の蜜を吸うと文字通り甘い汁が少しばかり口にできます。カズラとは(つる)のこと。吸う蔓からスイカズラの名が付きました。この植物は食べられませんが、利尿作用以外に解毒、消炎、解熱、リウマチ、神経痛、化膿性疾患等の薬理効果が報告されています。

私たちが飲んだ水分は体内に入って、血液に混入し、酸素と二酸化炭素のガス交換、栄養と老廃物、ホルモンの運搬に供し、一旦役目を終えた水は尿として体外に排泄されます。

東洋医学では、利尿は最も重要な生理機能の一つです。なお、記事で紹介した草根木皮の薬剤を利用する場合は、必ず漢方薬局に相談して下さい。これからも、利用頻度の多い草根木皮については、この稿でさらに紹介するつもりです。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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