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第77回 自分の健康は自分で守る
漢方(東洋)医学の治療原則

病気の治療にしても、予防にしても「(カン)」「()」「()」「()」が基本的な考え方です。「汗」とは文字通り汗をかかせるような漢方薬やツボを用いることです。

この稿では汗をかくことによって病気を治療することについて考察してみましょう。

風邪は“万病の元”といわれます。“風邪”はあらゆる病気の元であるから十分用心しなければならない、ということです。古人の生活の知恵でしょうね。

風邪のひき始めは、クシャミ・寒氣(さむけ)・発熱・頚部や背部の(こわ)ばりなどです。これらの症状の原因はみな、発熱によるものです。例えば鶏卵の白身、つまり卵白は蛋白質です。熱を加えると固まります。ヒトの筋肉も蛋白質です。発熱すると次第に(こわ)ばってきます。火事→小火(ぼや)は大事に至らないうちに消せ、とは当然のこと。

風邪の初期に治療処置することは、小火を消すのと同じこと。風邪をひくと、立毛筋が収縮し、鳥肌が生じます。皮膚の上層部に位する、この立毛筋は体温の調節をしています。ところが熱が出てくると、汗腺(皮膚の真皮または、皮下組織にあって汗を分泌する管状の腺)も収縮し、体外に体温を放出しなくなるため、体温が上昇する事になります。私たちヒトは定温動物です。一定の体温を保持しないと生理の異変を来し、体調を狂わします。

私の住まい、また治療室は都心の四谷にあります。治療室への道々やJR四谷駅付近には葛が繁茂しています。葛はマメ科の植物で蔓つる性です。木に巻き付いたり、地べたを()って仲間を増やし、蔓延(はびこ)ります。葉が大きく春から夏秋を経ても日当りの良い所では、葉を落とさずに緑の彩を揺らしているのを見かけます。この蔓は、それがために光合成の結果、根に多くの澱粉を蓄えます。この澱粉を採したのが、葛粉(くずこ)です。知る人ぞ知る葛湯にし、解熱剤として用いられています。

漢方薬として、あまりにも有名な葛根湯も、勿論蔓の根が主剤です。風邪の症状が進行しないうちに服用すると小火のうちに治おさめられるということです。ちなみに、葛根湯の処方は、葛根(カッコン)8g・麻黄(マオウ)生姜(ショウガ)大棗(タイソウ)各4g、桂枝・芍薬各3g・甘草(カンゾウ)2g。扁桃炎や蕁麻疹にも処方されます。

このようにして、経験に経験を重ねて、子々孫々に伝授された医学・医療は、今日(こんにち)に安全、安心に用いられているのです。繰り返し記すことになりますが、永い年月のうちで得た知恵は、何と頼りになることでしょう。

私の生家の周りは木々で囲まれていました。秋になると落葉で埋まります。その落葉を集めて焚火(たきび)をします。その中にほどほどの石を入れます。その石を取り出して、ぼろきれに包み、冬の寒い夜、布団に入れて暖を取っていました。祖父の姿が今、目に浮かんでいます。健康の維持は第一に身体を冷さないことと心得て下さい。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

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