日本シティジャーナルロゴ

第82回 自分の健康は自分で守る
我が古里も薬草の宝庫

今年も暑い夏でした。夏が暑いのは当り前。数年前、早朝に受診に来た女性の患者さんが腹立しげに私に話しかけてきました。今朝主人に「今日も朝から暑いわねぇ」と声をかけたら「当り前だ夏なんだから」と応えてきたというのです。「そうだなぁ、ひと雨も降ってくれゝばなぁ」という言葉を期待していた彼女は憎々しげに私に訴えました。それを聞いて、ベッドで横になっていた患者さんは声をこらえながら笑っていました。

そんな今年の夏も、少しづつ日差しが伸びて来ました。

この頃になると故郷での秋を想い出します。野原や田畑、川で遊んだことがなつかしく脳裏を(よぎ)ります。小さな竹籠を腰に付けて、山に向います。茸狩りの出立(いでた)ちです。近くの山は、せいぜい100~200メートルの標高しかありません。雑木林が多く、多種の食用になる茸が生えます。それ以外に薬草を採取することができ、中でも“せんぶり”は良質です。今日、漢方薬局で販売されているせんぶりは、ほとんど畑で栽培されたものです。せんぶりはリンドウ科に属します。せんぶりは漢字で千振と記され、千回振り出しても未だ苦いという意味から命名されたと伝えられています。別名は当薬、(まさ)に薬であると。秋の開花時期に全草を採取し、軽く水洗いし陰乾(かげぼし)する。十分乾燥させた後、密閉容器に入れて保存します。薬理作用は胆汁の分泌を促進する。また胃や腸の蠕動(ゼンドウ)運動を亢進する。唾液、液分泌の増加作用。肝障害抑制作用、血糖値下降作用。それに意外に知られていないが育毛作用があります。医療用にも医療部外薬にも、センブリが処方され、消化器疾患や整腸薬、育毛剤として広く用いられています。

秋の七草には数えられませんが、リンドウはセンブリの仲間です。漢方薬名は竜胆。繰り返しになりますが、やはり大変な苦味を呈します。竜は中国の想像上の動物ですが、その(きも)の味に似ていると譬えたものでしょう。竜肝をリンドウと訓読みします。センブリと同時期に花をつけます。リンドウには種類が多くチョウセンリンドウ、マンシュウリンドウ、エゾリンドウ、トウホクリンドウ、ホソバリンドウなどの根茎を、やはり水洗いし良く陰乾にしたものを用います。今迄に記しましたように、400mlの水で25分ほど煎じ、粕をこして、この汁を1日3分服し、片頭痛、経閉、腰腹痛に作用します。

(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)

横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
  • 1939年、茨城県常陸大宮市生まれ。

大塚敦節氏に漢方を、小川晴通氏に鍼灸を師事し、東京医療専門学校卒業後半年で母校の講師となる。中国医学研究会設立に参画、日中医療普及協会会長、東京都日中友好協会常任理事等、日中の友好関係へ尽力。

現在、一本堂横山鍼灸療院院長、東京医科大学にてホリスティック医学を講義中。「カラー版鍼灸解剖図」「アレルギーはツボで治る」など著書多数。

  • 診療所:東京都新宿区本塩町10 四谷エースビル101
  • お問合せ:03-3359-6693

© 日本シティジャーナル編集部