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クルージングシーズン到来

ヨット

今回はクルージング紀行をご紹介しましょう。いずれも40代半ば、私とOさんは大学の同級生、OさんとKさんは中学の同級生といういずれも長年のつきあいのため何の遠慮もしない仲。準備もほとんどしないまま5月6、7日の連休を利用し、浦賀から内房富浦へのショートクルージングを行ないました。8:00ハーバー集合。天気は晴れ、気温25度を超える予報に心躍らせながら出港準備です。準備といっても水タンクを満タンにし、軽油の残量チェック、ビールの本数チェックといったところで特に大層な事は何もありません。エンジンをかけハーバーを出ると湾の奥に帆船が目に入り目的地とは180度方向違いだったのですがちょっと見学に寄り道です。久々に見る日本丸は湾の一番奥に停泊し、一般公開日なのか岸壁にはテントも準備され、乗組員も正装で各所に配置されてお祭りムードでした。日本丸の見学を終えいよいよ目的地へ向かいます。

南南東の風がやや強めのためジブ(前についている三角の帆)は半分の大きさにしてセールを展開します。エンジンを切ってセールだけで走り始めると小さくしたセールとはいえヒール(傾斜)きつく結構なスピードで走り始めました。一足早く夏が来たとTシャツ短パン姿の一同は大喜びで、とりあえずビールで乾杯。祭日のため東京湾を行き交う船も少なく、目に付くのは乗合の釣り舟。南からの2~3mのうねりのなか大きくゆれる舟の上の釣人を見ているだけでこちらが船酔いになりそうな気分です。もっとも釣人達はヨットにのる我々を見て「よくあんな傾いた船に乗っていられるもんだ」という気持ちでいるようですが…

東京湾も真ん中を過ぎ内房の海岸線が近くに見え、日頃見慣れた景色とちょっと変っただけでも随分遠くに行った気持ちになりますが、まだ出発からは1時間半くらいしかたっていません。いくら夏のようだとはいえ、まだまだ5月。強い風、うねりであがる海水のスプレーを浴びると体は冷え込みます。しぶきをあげるたびに舵を握っている人間に「コラー!波をかぶらないようによけてくれ!!」対する船頭は「これでも精一杯よけているけどあの波が2つ続けてきたらよけきれないよ」とのやりとり。これが到着まで3~4回。

いい風にもめぐまれ3時間もすると今日の目的地富浦湾の入口にさしかかりました。ここは25年前夏の間毎日ヨットの練習をしていた懐かしの地です。当時と変らぬ姿の沖合いの小島を横に見、定置網をよけつつ、さて今日は新旧どちらの漁港に入ろうかと相談です。今回はメンバーも少なく、宿泊は船の中。漁港が一杯だったら湾の中に錨をおろして停泊の予定のため、どこに泊まるか決めなければいけません。新しい漁港は広くて設備は良いけれど今回は晩飯の買出しもあるので旧港に決定。セールを降ろし、エンジンで構内に入るとさすが連休中、モーターボートやクルーザーが岸壁を埋めていましたが、ちょうど1隻分の空いた場所を見つけ舫を取って落ち着きます。到着してからは特に予定も無く、昼飯のカップラーメンを食べた後は晩のおかずを魚屋に買出しに行くKさんを見送ったらビールを飲んで昼寝。岸壁ではバーベキューセットを中心に大勢で盛り上がるグループもいましたが、うるさいと思う間もなく夢の中へ突入。幸福感に包まれた眠りに落ちます。1時間ほどで買出しから戻ったKさん曰く、連休で魚屋さんも休みという事で唯一空いていたスーパーで鮪と蛸の刺身を購入との事。地魚のおいしい刺身の期待は裏切られましたが些細な問題など気にしません。近辺を散歩し岸壁の釣り人たちをひとしきりひやかしたら、駅前の観光案内所に紹介された民宿で風呂だけ浴びてようやくさっぱり。港に戻り缶ビール片手に日没の海をただただ鑑賞。日も暮れたところで船内での晩餐会です。メニューは先ほど購入のどこにでも売っている刺身、さつま揚げをちょっと焼いたもの、家から持ってきた残りものの鳥の手羽を暖めなおし、レタスときゅうりのサラダ、スパゲッティと取り止めの無いメニューではありましたが、持参のワインを飲みながらの馬鹿話とともに食べ終わる頃には睡魔におそわれ20:30就寝。「小学生でもこんなに早くは寝ないぞ」といいながら全員舟に当たる水音を子守唄にすぐ眠り込んでしまいました。

翌朝はさすがに日の出と共に起床。乗合の釣り舟は朝5時前にはエンジンの音と共に出港していきます。特別な予定も無いため周辺の海岸を散策。朝食後は誰からとも無く連休の最終日で車も込むから早めに帰るかということで9:00すぎには出港。昨日と違って北北東の冷たい風の中で長袖のジャケットを着込み、帰途は2ヶ月ほど季節が後戻りしたみたいです。12:30にはハーバーへ戻り後片付け後14:00解散。割り勘で今回一人当たりの費用は5000円。特別なことが何かあったというわけではない2日間ですが、私にとっては日頃の仕事を忘れリラックスできる貴重な時間を過ごすことができました。

(文:高坂昌信)

© 日本シティジャーナル編集部