日本シティジャーナルロゴ

上手下手

ヨット

ヨットが上手な人と下手な人は何が違うでしょうか?走っている船をしばらく見ているとすぐにその差がわかります。うまい人が操船する船は進路が一定し、前後左右の傾き具合も常に一定です。一方初心者の操る船の進路はフラフラ、風の強弱につれ傾き具合も大きく変化します。この差は風や波の変化に対しての微妙な舵の切り具合、セールへの風の受け具合を、いかに速く小さな動きで済ますことができるかがポイントになります。どんなスポーツでもその道を極めた人の動きには無駄が無く、必要最小限の動きで全てをコントロールしていますが、ヨットも同じです。

具体的なポイントは

  1. 風を受けるセールのコントロール
    (シート=ロープの出し入れで調整します)
  2. のハンドルと同じ舵の切り具合
    (ティラーと呼ばれる舵棒を操作します)
  3. 乗員自体が移動しとる前後左右のバランス
    (ひたすらバランスを取るために動き回ります)

重要なポイントはこの3点です。この3つのポイントをそのときの状況に合わせて繊細な神経でコントロールしていきます。一定の風で波も無い状況では操作はほとんど不要です。ベストのセールの確度、進路を決定し、バランスの取れたポイントを見つければ船は勝手にまっすぐに進んでいきます。極論すれば、舵から手を離しても船は設計通りの性能を発揮して問題なくまっすぐ進んでいきます。ところがこの状態から風が一瞬強くなったとします。この場合何も手を打たずそのままの状態では当然のことながらセールはより強い力を受け推進力が増すと同時に、船を傾けようとする力も働きますので船は傾きます。船は傾きが増すと風上側に行こうとする性質を持っています。(「オーバーヒールするとウェザーヘルムになる」とヨット用語では言います)ここで一瞬対応が遅れると船は風上側に向き、風を正しく受けられず失速してスピードが落ち、あわててもとに戻すとまた急激にセールに風を受け勢いよく走り始めると同時にまた傾きが増す、といったことの繰り返しになります。この状態を外から見ると船は右へ左へ蛇行し、傾いては戻りといった極めて安定しない状況、まるで酔払い運転の様に見えるわけです。ではどうすればいいでしょう。風が強くなったその瞬間にとる手段は先ほどの3つのポイントどれでもOKです。

第1の方法: 風が強くなった分だけセールが受ける風を逃がす。
第2の方法: 船が風上に向かいそうになった瞬間に反対の風下に行くよう舵をコントロールする。
第3の方法: 船が風を受けて傾きそうになった瞬間に体重を移動し船の傾きを抑える。

この3つを同時に行うことは、最初はなかなか思い通りにはいきませんが、だんだん慣れてくると自然と体が反応して勝手に操作をしている状態になります。この域に達すると本当の意味でヨットを乗りこなしているという実感を味わえます。ヨットがまるで生き物のように思え、乗っている私自身はヨットが一番気持ちの良い状態で進むことにちょっと手を貸しているという気分です。わずかのセール操作、舵の切り具合で船が思い通りの航跡で安定した状態を保っていると気分は上々です。ヨットが自然の中で風の力を受け波を切り裂きながら安定して進むとき、乗っている人も外から見ている人もヨットのすばらしさを目で見て体で感じることができます。反対にフラフラ走るヨットは見ていても不安になるだけです。何事もまっすぐ進むことは簡単なようで一番難しいことですが、基本を身につけ当たり前のことを当たり前に実行できればヨットは簡単なスポーツです。小学生からお年寄りまで人生を通じて楽しめるスポーツを是非一度体験してみてはいかがでしょうか。

(文:高坂昌信)

© 日本シティジャーナル編集部