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免許

ヨット

ヨットに乗るために必要な免許は小型船舶操縦士と呼ばれる免許です。以前は1級から4級まで船の大きさと外洋に出て行ける範囲で分類されていました。今年の6月からは分類が変り1級、2級、特殊の3つの分類に分かれています。取得するためには学科と実技の試験を受ける必要があります。私も4級小型船舶の免許は持っていますが、はっきり言って普通の人ならちょっと勉強して講習を受ければ誰でも取れる比較的やさしい免許です。

学科は船の構造、海図の見方、簡単な法規、エンジンについての知識といったところで、普通使わない用語でも意味さえわかってしまえば問題ありません。用語の意味がわからなくても過去の問題集を暗記すればOKです。実技試験も、桟橋から出発して指定のブイを通過し、途中で落し物を拾って(落水者の救助という設定です)もとの桟橋に戻れれば合格です。操縦自体はハンドルとスロット(ギアとアクセルが一緒になったレバー)だけを操作するので簡単ですが、1つだけ人によっては意外と大変なことがあります。それは大声を出すこと。海の上で走っているモーターボート上では通常以上に大きな声を出さないと聞こえないのではっきり大きな声を出す必要があるというもっともな理由からですが、もう1つの理由として小型船舶の免許制度に関連する組織にも大きく影響されているところがあると思われます。もとは笹川良一氏の日本船舶振興会(今は曽野綾子氏の日本財団)が深く関わっていたことも有り、講習や試験の際は極めて右寄りの軍隊式の態度が好まれます。実技教習中は何は無くても大きな声をださないと怒られてしまいます。何事も指差し確認を行いながら大声で"XX確認、異常なーし"と叫ぶわけです。20歳そこそこの若い時は免許のため仕方がないと思ったものですが、40歳すぎた現在同じ試験を受けたら間違いなく教官と喧嘩して、免許なんていらない!!と途中で帰ってきてしまいそうです。戦いに行くために船の操縦を覚えなければいけないのであればどんなに厳しくしても問題ありませんが、目的はレジャー。個人的には規律正しく号令のもと、きびきび動くこと自体嫌いではありませんが、実際に海に出る目的は日頃の時間に追われるあわただしい生活から離れ、時計もパソコンもない何にも束縛されない時間を楽しむことです。現在の免許講習のやりかたが今のままでいいのか疑問を感じるところです。

本当の意味でのシーマンシップを身に付け海の男(最近は女性も活躍していますので海の女でもいいのですが続けて書くと海女さんになってしまうのでここでは海の男ということでご勘弁)として認められるためには免許の有無は関係ありません。どんな自然状況であろうと、どんな船に乗ろうと自分自身と同乗者の生命を安心して預けられることが必要な条件です。そのためには船についての技術、とっさのときに的確な判断をできるための豊富な経験、そして自然に立ち向かう体力、最後まで何とかしてやろうという精神力の全てを鍛えなくてはいけません。未だに資格至上主義で船に乗ることも無いのに免許を取得する人もいるようですが、所詮は紙切れ。免許の有無にかかわらずいざというときに頼りになる人間を目指しましょう。現在はますます学歴も職歴も関係無い本当に仕事ができる人材が社会でも重要視されてきています。海の上でも陸の上でも自分自身を鍛え、どんな仕事でも、どんな天候でも、どんな船でも会社でも、乗りこなしていける力強い人間になりましょう。

(文:高坂昌信)

© 日本シティジャーナル編集部