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貸しヨット

ヨット

ヨットも車と同じようにレンタルすることができます。車だと主要な駅前に必ずレンタカー屋の事務所があり、クレジットカードさえ持っていれば免許書1枚ですぐ借りることができますが、ヨットの場合は貸している業者も圧倒的に少なく、よっぽどのことが無い限り貸しヨットがあるということすらわからないのが現状です。ひと昔前には夏の海岸には手漕ぎボートと並べてヨットを置いていたこともあったようですが、今では夏の盛りでもほとんど見かけることはなくなりました。

インターネットで検索してみても関東近辺でディンギー(2-3人乗りの小型艇)の貸し出しを行っているのは江ノ島ヨットクラブ、稲毛ヨットハーバーといったところしか見当たりません。また、借りる為の手続きも事前に申し込まないといけないなどチョット面倒なところがあります。その点海外ではリゾートの海岸ではすぐにヨットが借りることができます。どこの海岸でも見張りの若いオニイチャンにレンタル料を支払えば、その場ですぐセーリングすることができます。海岸に並ぶカラフルなセールが風にはためく姿は、実際にセーリングをしなくとも見ているだけでリゾート気分を倍増させてくれます。

私も以前、メキシコはアカプルコで、会社の先輩のたっての希望でヨットを借りたことがありました。海岸にはカタマラン(双胴船)のディンギーが2隻、メキシコ人の店番と価格交渉をしてどちらの船にしようかチェックすると、片方の船はマストをささえるワイヤーが半分切れかかっていてチョット強い風が吹くとマストが倒れる欠陥品。もう1艘は舵の部分の金具が壊れ操縦できないこれまた欠陥品。いずれの船も砂浜にセールをはためかせて置いているにもかかわらず全く使えないしろもので、せっかく盛り上がった気分に水をさされてしまいました。しかしここであきらめてはいけない、ということで私たちはメキシコ人のアンチャンとお互い中途半端な英語でやり取りをしながら、その欠陥ヨット2艘の部品を交換し1艘のまともなヨットを作り上げることにしました。ドライバーやスパナも一応ありましたが、これまた欠陥工具でまともに使えず、アカプルコでヨットに乗るという強い決意の元汗まみれで修理し、取りあえず乗れる状態にまで修復完了。冷えた缶ビールを片手にアカプルコの湾でのセーリングは、太平洋の夏の風を受け最高の気分で楽しむことができました。しかし、快適な気分で予定の2時間を半分ほど経過した時点で何かおかしい。スピードが出なくなってきました。よくよく見ると船が少し沈んでいます。どこか船体に亀裂がありそこから水が漏っているのは間違いありません。ひととおり出港前にチェックはしたものの表面からはチェックできない部分に問題があったようです。完全に沈没してしまう前に浜へ逃げ帰ったのは言うまでもありません。今となっては良い思い出になりましたが、一歩間違えれば遭難騒ぎにもなりかねないところでした。

貸しボート屋で手漕ぎのボートを借りるのと同じ感覚でヨットを借りることができるのは理想ですが、そのためには自分については自分で責任を持たなくてはいけません。どんなおんぼろ船を借りようとも、その船に乗るか乗らないかという最終的な責任は自分自身にあるのが当たり前と考えないといけません。メキシコ人の貸しヨット屋に責任を負わせたところで最後に遭難するのは自分自身です。私はこのことをアカプルコで身をもって勉強することができました。

(文:高坂昌信)

© 日本シティジャーナル編集部